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「お前だけついてくるのか?仲間が心配するぞ?」
いつも大悟の側にいたので話しかけられてある程度の言葉を理解し始めたウルは、都合の悪いことは聞き流す術を身につけていた。
「ぬぅ、賢くなりやが……っ!」
急いで最後の干し肉を、口に放り込み立ち上がる。
口笛を吹き狼たちを密集させる。
「みんな動くなよ、なんかわかんないけど、とんでもないのが来てる」
気の波動は三つ、どれも今まで感じたことのない気を纏いこちらに向かってきている。
大悟一人なら逃げられるかもしれないが狼たちをほっておくわけにはいかない。
「みんな、少しだけ離れてくれ」
群れを後方に下げて大悟は気を練る。
周囲に漂う気を集め網目状に形成する。
そして迫る三つの影に向かって放った。
元々は魚を捕るときに苦心して覚えた技だ。
標的に当たる瞬間手元から繋がっている気の糸を引っ張る。
同時に網が囲うように閉じる。
「あー、ダメだったか」
すり抜けられた。
それと同時に三人の、人間に囲まれた。
「え!子供?!」
「だとしても油断ならん」
「小僧、何故ここにおる?」
三人ともそれぞれの反応を見せる。
変わらないのは三人ともいつでも攻撃できるように身体に気が渦巻いている。
面白いことにそれぞれの気の色が違うことだ。
「そんなに警戒しないでくださいよ。こっちは約一年ぶりに人にあって喜んでるんだからさ。今にも放ちそうなその物騒な気を止めてもらえるとありがたいな」
「……どうやってこの森に入った?」
真ん中の長身、灰色のスーツにインテリ眼鏡、その奥には切れ長な目がこちらを射ぬく。
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