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「ほぅ、賢狼の長に収まっとるのか。何とも珍しい」
「長い付き合いだからさ、助けたり助けられたりさ。で、俺をどうするつもりですか?」
そろそろ本題に入ろう。
結局、三人が何者なのかもわかっていない。
「クオリア魔術学園敷地内への無断侵入及び身元、素性共に不明。拘束し、学園長の指示を仰ぐことになる」
「なるほど、しかし、魔術学園ねぇ」
ここに来て異世界的発言が飛び出すと改めて思い知らされる。
ここが地球でないことを。
「しかし、賢狼を敷地内においておくのはあまり良くないかと思います!」
「確かに、学園の生徒と遭遇すると互いに危険だ」
「互いに?」
生徒にではなく互いにということはウル達にも危険があるということだ。
「賢狼は非常に珍しいんじゃ、毛皮や爪、牙等は高値で取引されとる。生徒のなかに価値がわかるものがおれば危害を加える輩もおるかもしれんという訳じゃ」
「なるほど、それはあまりよろしくない」
今連れていかれたらおそらく中々戻ってこれない。
となると、群れとは別れた方が無難といえる。
「お別れだな、みんな」
この世界に来て初めての仲間を見ながら別れを告げる。
意味を悟ったのか狼達が大悟の側に集まる。
「ここにいるとお前たちが危険だ。大丈夫、また会える」
一匹一匹、頭を撫でていく。
「……ウル」
最後の一匹、本当の意味で初めて出会った、大悟に覚悟をくれたウルに向かい合う。
「いっ!」
いきなり、顔を引っ掛かれた。
左の目元に三本の赤いラインが入る。
「厳しいな、お前はよ」
目元の傷口を塞ぐことなく目を合わせる。
ウルはそっと近づいて傷口を舐めた。
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