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「とりあえず、歩くか。水もほしいし森もできるなら抜けたい」
裸足なので慎重に歩を進める。
いくら修行や道場で裸足が多く、それなりに固くなっているであろう足裏もこの森の中では長続きしないだろう。
「おっと」
しかし、さっきから妙だ。足場が悪いのは仕方ないがバランスが取りづらい、頭が出している力の出力と足に伝わる力が噛み合っていない気がする。
それに空気もどこが違和感がある。
森独特の空気だけでなく、何か力強いものが辺りを漂っているような感覚。
「うーん、まったくわからん。ホントにここ日本か? なんか嫌な予感する」
脳裏にニヤニヤ笑う祖父の顔がちらつく。
「ん? 水の音?」
微かに耳に届いた水の音を目指して思わず駆け出してしまった。
が、
「ぶっ! いってぇぇぇ!」
何故か木に正面衝突していた。
「な、なんで?」
鼻を押さえながらバッと後ろを振り向くと踏み出したであろう場所から10メートルは離れた木にぶつかっている。
「……まさか」
もう一度地面を踏みしめ踏み込む。
「おぉ!……ぐべっ!」
意識して走りを確認すると速度がおかしい、景色が一瞬で後ろに流れていく。
それに気をとられた瞬間、また木にぶつかった。
「いたた、やっぱり身体能力があがってる?」
それを意識した途端に体が軽くなるのと
同時に五感の変化を感じた。
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