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「え? いや、そういう事を言ってるんじゃなくてだな……」
口に運ぶ直前のポッテトが手から零れ落ちる。膝上を弾んで、そのまま地面に落下した。
言い訳を考えながら、僕は足元へ手を伸ばす。三秒ルールを遵守したとしても、既にタイムオーバーだ。まだ食べられそうだけど、遠慮しておくか。
紙ナプキンへと包んでいる最中でも、菜月の顔色は変わらない。トレーに置いていた紙コップを、いつの間にか自分の手元に引き寄せていた。あ、それ僕の……。
「ただ、なんとなく思っただけさ。確・実・だって言うのに、行き当たりばったりな作戦ばかりで、具体的な方法はないのかなって」
仕方なく買ってきておいたコーラを口にする。お水と炭酸ジュースを同時に準備しておく二刀流っぷり。大谷翔平もビックリだ。
「ないわよ、そんなの」
菜月は開き直った口調でそう言って、乱暴に水を飲む。おまけに氷を歯でガチガチと砕いていた。獣か。
……ふむ、なるほど。最初から根拠はなかったと。ただの恣意的な行動だったんだな。
「……そうか。なら、そんな無理して協力してくれなくてもいい。別に僕から頼んだワケでもないしな」
「は? なんでそうなるのよっ。方法がわからなかったの!」
「じゃあ聞くけど、だったら何で協力してくれているんだ? お前にメリットなんか無いじゃないか」
冷静かつ慎重に切り出す。無償で協力するのは変ではないだろうか。本来ならば何かしらの利害関係があってこそ、成り立つものだろう。菜月ばかりに協力させておくなんて、こちらとしても顔が立たない。
ストローをいじりながら、彼女の回答を待った。アイツは詰まらせながら「えっと、だから、その」と歯切れの悪い言葉を並び立てていた。
「アンタが言ったじゃない」
ん?
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