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「えええええ! なんでガッキー濡れてるの!? 」
一番はじめに帰ってきたのは、柳葉だった。トレーにラーメンと炒飯セットを乗せて目を丸くしている。いっぱい食べる君が好き、なんつって。
「ちょっと、諸事情で……。安穏と渚は?」
「そんなので納得できるかーい! のどちゃんとなぎたんはもう少しで帰ってくると思うよ。あー、もうビチョビチョじゃん……」
柳葉がトレーを置いて、自分の鞄からタオルを取り出してくる。パンダ柄の黒と白のヤツ。
「もー、どうすりゃこんな濡れるのさ。拭いたげるから。目は閉じててー」
「……うーっす」
言われた通りに目を閉じると、顔をタオルで拭いてくれた。鼻先から柳葉の匂いがする。あるよな、人の匂い。上手く説明出来ないけど、柳葉のいいにおひ。
「んっしょ。ガッキーくんはやんちゃ坊主だなぁ……」
「な、なんだその設定」
「こら! 喋らんでええ!」
ビッグなマムよりも愛情たっぷりでゴシゴシと拭かれていると、なんだか変な気持ちになってくる。髪をグシャグシャとされて、まるでペットみたいだ。……すごい、恥ずかしい事をされてるような。
「それにしても、ガッキー。こうしてみるとやっぱり男前だよね。水も滴るイイオトコってやつ?」
グイと顎を持たれて、両手でギュッとほっぺを押し込まれる。アッチョンブリケだ。アッチョンブリケ。
「おー、こんな変顔状態でも超かっくいい」
「……もごもご」
上手く喋れなかった。とりあえず人の顔で遊ぶのはやめてほしい。
「はい、後は自然乾燥ね。タオルは今は貸しておくから、帰りに返してくれたらいいよー。あ、いっけなーい! ラーメンが冷めちまうぜ!」
「お、おう。ありがとうマミー」
首にタオルを巻かれてようやく解放される。……悪くない良い心地だった。柳葉マミーありがとう。
ようやく目を開けると、安穏が既に戻ってきていた。トレーにカップアイスを乗せたまま、微笑している。あ、ヤバい……。
「善一くん、意外と甘えん坊さんなの?」
半笑いで席に着く安穏。あぁああぁああ!!! 見られてたぁあああ!!
……取り乱した。少し反省。
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