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渚も戻ってきて、事情聴取が始まった。なんら?をつく必要もなかったので、正直に話す。と言っても安穏本人がいるので、作戦のことは伏せて喧嘩したって事にしたけど。
「んー。なっちゃん電話出ないね。どこ行っちゃったんだろ」
「さ、探しにいくっ……?」
電話には出ないとなれば、渚の言うように探しに行くしかないだろう。ともあれ、会ったとしても気まずいな……。
「大体……モグモグ、なんでうみちゃんと喧嘩したのさー?」
炒飯を口にしながら尋ねてくる柳葉マミー。こら、食べながら話すのはやめなさい。お行儀が悪いんだから。
なんで喧嘩したと言われたら、一体なんなんだろう……。本当のことは言えないので苦笑しておいた。
「あいつの気持ちを汲めずに、つい言い過ぎたのが原因かもしれない……。僕が悪いんだ。頭に水を掛けられたのも、冷静になれって意味なのかもな……」
大まかな理由は言えない。ただ自分の心境を訴えると、柳葉が箸を置いてふむふむと頷いた。なにがわかったんだ。
「いやー、青春ですねーダンナ~。友達にキツイことを言って凹むって、可愛げがありますぜ。世の草食系男子も見習うべきだ」
草食系とか言われても分からない。どちらかといえば肉が食べたい方だ。肉だ肉を持ってこーい。
「反省したのなら、謝るのが大事よガッキー。悪いと思ったらきちんと謝る。そんな素直な気持ちがあれば、うみちゃんだって許してくれるよ」
肩に手を置いて、柳葉はニコリと笑った。その言葉とか、仕草とかがとても温かくて、なんだか少し泣きそうになってくる。
「ほりゃ、思い立ったらすぐが吉日だよ。謝りたいなら探してきんしゃい。ツッキーも反省してるかもだし!」
「そ、そうかな? あっ、ありがとう柳葉! ちょっと一人で探してくる。ちゃんと謝ってくるよ!」
席を立って鞄を手に持つ。余ってるポッテトはきっと置いていても食べてくれるだろう。というか、うみちゃんなのかツッキーなのか。どっちだ。
「へいへい、いってらー」
「善一くん、気をつけてね」
「わ、わたしたちも後で行くねっ……!」
三人に見送られながら、僕はフードコートを出て行く。
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