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信じて欲しいとはなんなのだろうか。よくわからない。僕は彼女を信じていなかったのか?
「味方だって言ってくれたのに、あたしの存在がそんなに足を引っ張ってた!? それなら言えばいいでしょ! お前なんか要らない、用済みだって!」
「……菜月は足を引っ張ってない、むしろ手を引いてくれた方だ。ごめん、本当にごめんな」
相槌を繰り返して、自分の非を認め、ただ彼女の話に耳を傾ける。余計なことをいうのはやめておいた。
僕としては『菜月に遊園地を楽しんで欲しかった』だけであった。僕なんかの協力ばかりに時間を浪費するのではなくて、自分の為に使って欲しかっただけである。
……それを吐き出すことはしなかったけれど。
しばらくの間、ずっと僕は怒られていた。何に対して怒られているのかどうでもよくなった頃合い、気持ちが落ち着いたのか菜月は黙った。足元の芳香剤をそこで拾う。
ここで僕もようやく重い口を開いた。
「あのベンチに座って、一緒にホットドッグでも食べない?」
妙に小腹が空いてきてしまった。
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