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いつも俺の傍にいるから、さすがにまだ手を出そうと
する奴はいないが、油断は禁物だ。
目を瞠って胸を抑えていた多恵が、慌てて
洗面所に走って行く。
やっと何をされたか気が付いたか。
追いかけて行くと、唖然と鏡を見ていた
彼女から、抗議の声。
「明日仕事なのに、こんな所に付けたら
見えますよ!」
「見えない服を着ろよ。他の男に必要以上に
肌を見せるな」
自然にそんな言葉が出た。
胸倉に掴みかかっていた、多恵を抱き上げて、
視線の高さを合わせてやると、口をパクパク
させた後
「…見かけによらず、恥ずかしいセリフ、
平気で言いますね」
「あ゛、喧嘩売ってんのか?」
「そんな恐ろしい事しません、わたしを苛めて
楽しいですか?」
「男は好きな子の事は、苛めたくなるんだ」
ニヤッと笑って言う。
意地悪だという多恵を抱えたまま、
洗面所を後にした。
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