8.想いのままに

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いつも俺の傍にいるから、さすがにまだ手を出そうと する奴はいないが、油断は禁物だ。 目を瞠って胸を抑えていた多恵が、慌てて 洗面所に走って行く。 やっと何をされたか気が付いたか。 追いかけて行くと、唖然と鏡を見ていた 彼女から、抗議の声。 「明日仕事なのに、こんな所に付けたら 見えますよ!」 「見えない服を着ろよ。他の男に必要以上に 肌を見せるな」 自然にそんな言葉が出た。 胸倉に掴みかかっていた、多恵を抱き上げて、 視線の高さを合わせてやると、口をパクパク させた後 「…見かけによらず、恥ずかしいセリフ、 平気で言いますね」 「あ゛、喧嘩売ってんのか?」 「そんな恐ろしい事しません、わたしを苛めて 楽しいですか?」 「男は好きな子の事は、苛めたくなるんだ」 ニヤッと笑って言う。 意地悪だという多恵を抱えたまま、 洗面所を後にした。
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