8.想いのままに

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「どこって、職場で」 「うちの社員か、俺の知ってる娘か」 「知ってるかどうか… さっきおまえの目の前にいたけど」 「もうええから、名前を早よ言え」 「多恵、榊原多恵。俺の補佐」 今にもキレそうな榎田の剣幕に、素直に教えてやった。 元々隠す気も無いし。 「珍しく長続きしてるって有名な娘やな。 自分の彼女やから、続いてるってわけか」 「いや、それは違う。 確かに気が合うからやりやすいが、多恵の事務処理能力は どこに行っても評価されるくらい優秀だ」 「ふーん、おまえの方が惚れ込んでんのやな」 「そうだ」 初めて付き合った女から現在まで、お互いの 女関係を知り尽くしている俺達。 多恵が現れるまで、ポーカーフェイスじゃない俺を 唯一見せることができた人間だ。こいつには多恵に 出会い、前に進めた俺を喜んでほしい。
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