8.想いのままに

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多恵に対しては、何の飾りも計算も要らない。 想いのままに振舞える、初めての女。 榎田の言い分を認めると、多恵の話題になってから、 ずっと寄せられていた眉間が、やっと開く。 そして、避ける間もなくバシッと背中を叩かれた。 「ってぇ…」 「良かったな、おまえにそんな顔させるんや、 大丈夫やろ。せいぜい仲良うしいや」 「ああ、そうするよ」 納得したか、こいつにも随分心配かけたな。 ホッとして開けたままになっていた、缶コーヒーに 口を付ける。 「で、もうヤったん?5年ぶりやろ、大丈夫やった?」 「ゲフォ、ゲホ、ゲホ、おま、ケホ…何言って…」 いきなり突っ込まれてむせ返る。 「重要やろ、アラサー男が好きな女に 手ぇ出さずに我慢できるん?」 「直球過ぎるだろ、おまえの心配なんていらねえよ!」
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