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目の前でキーボードを打っていた多恵が、手を止め、
ため息を吐く。
「多恵」
「はい?」
名を呼べば、返事とともに、優しい笑顔が返ってくる。
「疲れた?」
「ううん、大丈夫」
その笑顔がまた、俺を笑顔にする。
「うわー、守谷さんと多恵ちゃん、職場で堂々と
見つめ合っちゃって。目の毒ですよ!」
河村が大騒ぎするから、皆がこちらに注目する。
岡本さんがそれに便乗して俺達をからかい、部署が
笑いに包まれた。
「もー、ラブラブは家でやってください」
「後学のために、おまえに見せてやってるんだ」
そう言って、ニヤリと笑った。
笑うことが難しかったあの頃が、今では嘘のようだ。
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