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必死に訴えかけるその姿が、何とも可愛くて
思わずクスリと笑みが零れた。
何だ?
俺は今、笑ったか?
ここ数年殆ど使わなくなった、笑顔を作る為の
表情筋を使用した事に、自分で驚いた。
そんな俺に目を瞠り、凝視する彼女をもう一度
盗み見て、その場を立ち去った。
初めて見る顔だな。
初々しくて、まだ学生でもいけそうだ。
俺は女の顔なんか、いつもロクに見ちゃいないけど。
オフィスに戻りながら、そんな事を考えてふと気付く。
こんなに一人の女の事を考えるのって、いつ以来だ?
遠目に目が合っただけの、言葉も交わしてない女なのに。
そう思ったら、増々あの子の事が頭に浮かぶ。
ま、俺には関係ない。
そう決めつけて、無理やり頭の中から追い出した。
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