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「なあ...」
「はい?...というかくすぐったいです」
春のさらさらな髪を長い指で鋤くと擽ったそうに身を捩る
「お前は...好きな奴はいないのか?」
会長の言葉に一瞬きょとんとする春
「は?えっと...会長?大丈夫ですか?」
「なにがだ?」
なにがと言われても...
「此処は男子校ですよ?しかも寮生活でどうやったら異性と交流できるのですか?」
こんな閉鎖された空間で恋愛などできるはずもないだろうにと怪訝な顔で会長を見る
「男は...」
「はい?」
「男は好きにならないのか?」
この人は一体どうしたんだろう...こんな冗談を言う人だったろうか
かれこれ小学校初等部からの付き合いだがこんなことを言うとは思わなかった
「お前...初等部からいるのに男を好きになったことないのか?」
「あるわけないです。同じ男に好意を抱くなんて...」
友人として好きだと思ったとしても誰かに恋慕を抱くなんて
今この時まで、自分は卒業したら大学で彼女を作るか、親が決めた結婚相手と生涯をともにすると、そう思って疑わなかった
「私は、会長もそうなのだと思ってました...貴方は誰から告白をされても断っていましたし...そういう..性の噂も聞いてませんし...」
残念ながらこの学園には親衛隊という、謂わばファンクラブのようなものがあり、容姿の良い会長や春などには当然の如く親衛隊は存在していた
特に会長である彼は容姿もさることながら頭脳、運動神経、そして家柄も大変良く、そんな彼に群がる生徒は大勢いた
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