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「ハァハァ...なんで...キスなんて」
初めてのキスで潤んだ瞳と唾液で濡れた唇を指で拭われる春
「言ったろ?俺はお前が好きだって。だから意識させるためと、初めてを誰にも渡さないために奪った」
悪びれもせずにしれっと言う彼に、何故か怒りが湧かなかった
「もし...私が貴方を嫌いになったらどうするつもりだったんですか?」
普通なら好きでもない、しかも同姓にキスなんてされたら確実に嫌いになる
「そんときはそんときだ。だが俺は諦めないけどな。こっちを向くまで付きまとってやる」
「会長って案外神経図太いんですね」
そのポジティブさを違うところに生かしてくれれば問題ないのに
「それで?」
「なんですか?」
ニヤリと笑う会長に思わず眉間に皺が寄る春
「お前は...春は俺が嫌いになったか?顔も会わせたくなくなるほど、俺が嫌いになったか?」
余裕そうに見えるが、少しだけ悲しそうな...そんな表情をしている会長
長年の付き合いだから分かるのかもしれないと内心で苦笑する
「嫌い...になれたらいいんですけどね。どうやら私はこんなことくらいじゃあ会長から離れようとは思わないみたいです」
少しだけ瞳孔が開く会長はきっと驚いているんだろう
「だからって会長のことを好きだとは言ってませんからね?あくまで人として嫌いにはなれないだけなので」
勘違いをされたらいけないからはっきりと断言する春に
「ククッ...今はまあ..それでいい。だがこれからは遠慮せずにお前を堕としにいくからな。人前だろうと関係ない。お前を手に入れるためならな」
そう言って額に、頬に、首に、手の甲に、最後に唇にキスを落としていく
「覚悟しとけ?春」
この自信に満ちた会長に嫌気が差さないのは長年の連れだからなのかそれとも...
「受けてたちますよ?やれるものならなってみなさい」
知らずに咲いた恋心のせいか
end
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