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「おいあんた...助けてほしいか?」
俺に向けて放たれた言葉に
「助けて...」
小さかった声だが、確かに伝えた
その瞬間、俺に覆い被さる男は目の前から消えて壁に打ち付けられていた
「てめぇ!!」
そして俺の腕を押さえつけていた男はそれを見て頭に血が上ったのか、平凡な男目掛けて突っ込んでいった
「がはっ!」
やられたのは突っ込んでいった男
鳩尾に回し蹴りを入れられ、気絶していた
俺はそれをただ呆然と見ているだけだった
「大丈夫か?」
「え?あ...なん、とか...」
うん...未遂だから忘れてしまえばなんてことはない
「その格好じゃ帰れないな」
破られたシャツのことを言ってるんだろう
「これ、たぶんサイズ変わらないだろうから着て帰れ」
そう言って自分が着ていた上着を俺にかけてくれた
「ありがと...ちゃんと返す」
「いや、捨ててくれていい。それじゃあな。あんまり無茶なことはするなよ?」
それだけ言うと彼は走り去っていった
捨てろと言われた上着は今もクローゼットの中にある
時々抱き締めては、彼を思い出していた
それからすぐに高等部に入学し昼は学業、夜は彼を探すために街に出た
だけど1度も会うことは叶わなかった
「まさか同じ学園にいて寮生活だから会えなかったなんてな」
鳴沢が学園にいることがわかったのは生徒会長になって全校生徒の資料が見れたから
「あー...あの時の。暗かったから顔は見えなかったんだよな」
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