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エメラルドの長く艶やかな髪。
透明感のある白肌はラメカラーのボディグリッターが塗られ、輝くばかり。
長い睫毛の下には、髪と揃いのぱっちりとした瞳。
レースとリボンをふんだんにあしらったビスチェドレスの胸元には人よりもずっとたわわな二つの膨らみが存在を誇示していた。
ティルアは思わず胸元を触り、ずきんと胸を痛ませる。
「あら」
女性は孔雀毛の扇子を開き、口許に充てた。
「もしかして、あなたがティルアさん?
ラズベリアの美しい花々は今や我が国になくてはならないもの。
ラズベリアは小国ながらも美しい国だとアスティスから聞いておりますわ」
「……!! では貴女がアスラーン国第二王女ミアンヌ様……!
我が国の繁栄はアスラーン国あってのもの。
私は第七王女ティルアでございます」
ヒールを脱いだままの足先を床に降り立たせ、ティルアはドレスの裾をそっと摘まんで深々と頭を垂れた。
ミアンヌの目に首元の愛痕と指先に光る指環が目に留まる。
憎悪で顔が歪むも、口元は孔雀毛の扇子がすっぽりと覆い隠す。
「ティルアさん、まさかあなたアスティスと同室にいるおつもり?
今この国がどんな状態に置かれているかご存知ですわよね?」
「え……?」
「今この国には、舞踏会の一件で不信を買った同盟国の使節団が幾つも滞在されておりますの。
そんな時節にこのような真似をなさるなんて……使節団の方々の目に留まることでもあったらどうなることか……!
まさかティルアさん、アスティスの足を引っ張るおつもり?」
「!! そ、そんなつもりじゃ……」
ティルアの顔色がさっと変わる。
「我が国アスラーンの使節団もこちらにおりますの。わたくしはその大使としてこちらに長期滞在を許されている身……」
ミアンヌはアスティスの部屋を徘徊する。口元を隠す扇子の下に薄ら笑いを隠して。
ティルアに背を向け、優雅に床を歩くヒールの音が部屋に響く。
「アスティスの幼なじみとしても、国の大使としても黙って見過ごせるものではないわ」
「あ……!」
「しかしミアンヌ様、これはアスティス様からのご意向で――」
「アスティスにはわたくしから伝えておきますわ。
あなたはすぐティルアさんの部屋を用意して差し上げればよろしいのです」
ティルアから丁度死角の位置に立っているミアンヌはティルアへの憎悪をメイドに向けた。
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