第二夜 絡みゆく運命

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 ハムレットは灰の太眉をひきつらせた。  訓練剣を使用してのほんの小手調べのはずだった。  力こそないものの、素早く打ち込まれる無数の斬撃を受け止めるだけで精いっぱい。反撃の隙すら与えられない。    女のような細腕の新兵だと思ってみたものの、とんだ間違いだったことを思い知らされた。  しかし、その表情は決して良いものではない。  何かとてつもない負の感情から逃れるかのように、苦悶に満ちた表情。  休憩中の詰所に兵はいない。ハムレットは失態を見られずに済んだことに安堵の念を灯した。 「なるほど、なかなか速い……力ではく、スピード重視の戦法だとはな」 「はい、僕は力がありません。  だからこそ、速さを磨く術を身に付ける他なかったので……」  ひとしきり撃ち据えたティルアは額の汗を拭いながら、擬似剣をじっと手に取り見定める。 「お前のような細っこいのがこれほどまでの身のこなしを身に付けるには、相当な努力を要したに違いない!  見事だ! 久し振りに鳥肌が立った」  それはティルアが何よりも欲しかった言葉の一つ。  ハムレットは右手をティルアへと差し出してきた。  感激で目元が潤んでくる。 「ハムレット様のような御仁にそこまで褒めて戴けて……!  僕は幸せです……これまでしてきた努力が無駄ではなかったと……思えます」  しっかりと握手を交わすと、何故かハムレットは不思議そうな表情でティルアの顔をじっと覗き込んでくる。 「このような細く麗しい女性のような男がいるのだな。  ギルバードが男に走ることも頷けなくはない」  幸せに染めるティルアの頬にハムレットの汗ばんだ手のひらが舞い降りる。 「? ハムレット様……?」  驚いたのはティルアの方で、背筋をびくっと震わせた。 「……ああ、俺様は何を……!  何を考えている!?」  ハムレットを見上げてくる表情がさっと恐怖色に変わる姿を見てとり、彼はすぐさまティルアから身を引いた。  ――その時だった。  物々しい足音が詰所の静寂な空気を破壊し、兵が駆け込んできたのは。 「……!! あ、ハムレット様、兵らは――」 「何だ、騒々しいな。  見ての通り、休憩だ。  まさか、街で何かあったのか!?」 「!?」  彼と兵のやり取りにティルアはすぐに意識の対象をそちらへと向ける。
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