第二夜 絡みゆく運命

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 ラサヴェルはティルアの奥に座り込む男に近付き、手を差し伸べた。 「さあ、お立ちなさい。  あなた方の身柄は騎士団の方々には引き渡しません。  ディアーナ教の名の下、セルエリア王族サイドと貧民街の民の架け橋となっていただくことにします」 「ラサヴェル様……!」  慈悲深いラサヴェルの言葉に、立て籠っていた百貨店の入り口から女性や子供達が次々と飛び出してきた。  野次馬や先行の騎士団の者らが呆気に取られる中、ラサヴェルはティルアに耳打ちする。 「―――――」 「……!」  ティルアの反応を待つことなく、ラサヴェルは野次馬に紛れていた従者らと共に立て籠り首謀者らを連れて歩き出す。  周囲の者らが慌てて道を開けていく。    * * * * 「あそこだ! ……ん」  セルエリア方面からハムレットとレンが現場へと向かう。  野次の輪を描く者らの視線の刺々しさに気付き、ハムレットは訝しげに太眉をひそめた。  百貨店前に突然開かれた道に気付き、ハムレットとレンは再度駆ける。 「お勤め御苦労様です、ハムレット。  一足遅すぎましたね……失礼」  からかうような微笑を浮かべるラサヴェルと、その後にぞろぞろと続く民の姿。  脳内の情報量が足りずに立ち尽くすハムレットの前に、先行していた騎士団の兵らがずらりと並び、跪いた。 「ハムレット様、百貨店襲撃並びに立て籠り、及びラズベリア姫誘拐犯はディアーナ教団ラサヴェル大司教が連れ去りました!」 「なっ、何……!?」  擦れ違ったラサヴェルの後ろ姿はもう視界から見えなくなっていた。  ハムレットは短い舌打ちをし、すぐにも百貨店前に躍り出る。  そこには、ハムレットの兄であるギルバードが昼間共にした者と仲睦まじく話している姿があった。 「ティルア、お前という奴は……無事だったから良かったと言うものの」 「ギル、ごめん。僕、黙って見ていられなくて」 「僕ではなく、私だろう?」 「うっ……ど、努力はしているんだ。  男の期間が長すぎたみたいで……」  兄ギルバードは帰国してからというもの、別人のように公務に精を出すようになった。  旅行先はそういえば、ラズベリアだったかもしれない。 「ギルバード」  ハムレットから後ろから声を掛ける。  途端にギルバードの表情は固くなった。
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