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私は知った。
抗いの中で絶望的な真理を覚ったのだ。
目覚ましを止め、ベッドから這い出る。
隣で寝る夫の寝顔を見ながら寝室の扉を閉める。
私の視界から消えた瞬間、夫はそこにいないのだ。
私は気づいた。
私の後ろに有るはずの背景がそこには無いこと。
私が見る眼前の風景は、私が見るから存在すること。
部屋の中から聞こえる子供の笑い声。
有るのは笑い声だけであることを。
繰り返しが何故始まったのか、それは私にもわからない。
慰めにこんな事を考える時がある。
あの男、それは私。
そして私自身とは、この空間を支配する者の夢の一部ではないのかと。
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