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部屋中に散らばった写真を片付けようとして、さっき伏せた2枚の写真の前で手が止まる。
「同じものが写っている」
と言った師匠の言葉も気になるが、
「見ないほうがいい」
という第6感が働く。
その時、師匠が妙に嬉しそうな顔をして床の上を見回した。
「人間には無意識下の自己防衛本能ってヤツがあるんだなあ、と実感するよ」
なにを言い出したんだろう。
「動物園ってなにするところ?」
話が飛びすぎで意味がわからない。
「動物を見に行くところだと思いますけど」
「たしかに、僕らはお金を払って動物園に行き、それぞれの檻の前に立って中の動物を見て歩く。しかし動物からするとどうだ。檻の中にいるだけで、色とりどりの服を着たサルたちが、頼みもしないのに次々と姿を見せに来る」
動物を心霊写真に置き換えればいいのだろうか。なんとなく言いたいことが分かってきた。
床を見ながら師匠は独り言のように呟いた。
「闇を覗く者は、等しく闇に覗かれることを畏れなくてはならない」
「ニーチェですか?」
「いや、僕だ」
師匠はどこまで本気かわからない顔で、床に散らばった写真を指差した。
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