葬祭

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大学2年の夏休みに、知り合いの田舎へついて行った。 ぜひ一緒に来い、というのでそうしたのだが、電車とバスを乗り継いで8時間もかかったのにはうんざりした。 知り合いというのは大学で出会ったオカルト好きの先輩で、俺は師匠と呼んで畏敬したり小馬鹿にしたりしていた。 彼がニヤニヤしながら「来い」というのでは行かないわけにはいかない。 結局怖いものが見たいのだった。 県境の山の中にある小さな村で、標高が高く夏だというのに肌寒さすら感じる。 垣根に囲まれた平屋の家につくと、おばさんが出てきて 「親戚だ」 と紹介された。 師匠はニコニコしていたが、その家の人たちからは妙にギクシャクしたものを感じて居心地が悪かった。 あてがわれた一室に荷物を降ろすと俺は師匠にそのあたりのことをさりげなく聞いてみた。すると彼は遠い親戚だから・・・というようなことを言っていたがさらに問い詰めると白状した。 ほんとに遠かった。尻の座りが悪くなるほど。 遠い親戚でも、小さな子供が夏休みにやって来ると言えば田舎の人は喜ぶのではないだろうか。しかし、かつての子供はすでに大学生である。ほとんど連絡も途絶えていた親戚の大人が友達をつれてやって来て、泊めてくれというのでは向こうも気味が悪いだろう。もちろん遠い血縁など、ここに居座るためのきっかけに過ぎない。ようするに怖いものが見たいだけなのだった。
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