第10話 【スタート!同棲生活】

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「ここが今日から麻弥の部屋だ。杏奈が泊まる時だけ使っていたが、もともとは空き部屋。クローゼットも好きなように使ってくれ」 そう言って先生に案内されたのは、玄関から見て両側合わせて4つある扉のうちの一つ。一番玄関に近い、広さは8畳程と思われる部屋に案内された。 小さな花を散りばめた淡いオレンジ色のカーテンとベッドカバー。真っ白な壁にオレンジ色が映え部屋全体が明るく華やいで見える。 「なんて綺麗で可愛い部屋…」 壁も襖もシミだらけの私の部屋とは大違い! 花柄をメインとしながらも派手すぎず、統一された優しい色合い。何たる高級感!そして、なんてメルヘンチックっ! 先生と出会わなけば、こんなモデルルームのような部屋に住める機会なんて無いだろう。 一歩足を進めて、部屋を見渡しながら満面の笑みを放つ。 「気に入ったか?昼間、杏奈が麻弥のためにカーテンとカバーを替えてくれた。麻弥のイメージで選んだらしい」 「えっ!?わざわざ私のために全部買ってくれたの!?」 「ああ。初めは薔薇一色の部屋だったからな。さすがに赤とピンクの部屋は落ち着かんだろ?薔薇、薔薇、薔薇。俺だったらうっとおしくて絶対寝付けんっ」 私の背後で、先生は扉に手を掛けたまま苦笑いを浮かべる。 「華やかなのは杏奈さんらしいね。このスリッパとかリビングのクッションとか、みんな杏奈さんの趣味でしょ?」 笑みを浮かべて自分の足もとに視線を落とす。 「俺の知らないうちにこの家が杏奈色に染められてく。…これからは、麻弥色に染めてくれ」 「えっ?…それって…」…どう言う意味? この家を、私色に染めてくれだなんて…いいの? そんな事有り得ない、有り得ないんだけどっ、…何だか、プロポーズの言葉みたい。 胸が『トクン』と、甘い音を立てた。
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