第1章

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元カレは言葉の多い人だった。 私が嬉しそうにしていると、悲しそうにしていると、寂しそうにしていると、 「どうしたの?」 何かあれば聞いてくる。彼と一緒にいて苦しいことは何一つなかった。むしろ、私のわがままを素直に聞いてくれることが申し訳なかった。 いい人だった。私にはもったいないくらい、実直でいい人だった。 だけど、別れた。私から話を切り出した。 「どうして?」 さすがの彼も食い下がった。私が何度もゴメンと繰り返すと、 「そっか」 納得してくれた。 ゴメンね。あなたが悪いんじゃないの、私のせいなの、ゴメンね、ゴメンね。 「ううん。レイちゃんは謝らなくてもいいよ。レイちゃんを悲しませちゃったのは俺なんだから」 彼は最期まで優しかった。
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