0人が本棚に入れています
本棚に追加
元カレは言葉の多い人だった。
私が嬉しそうにしていると、悲しそうにしていると、寂しそうにしていると、
「どうしたの?」
何かあれば聞いてくる。彼と一緒にいて苦しいことは何一つなかった。むしろ、私のわがままを素直に聞いてくれることが申し訳なかった。
いい人だった。私にはもったいないくらい、実直でいい人だった。
だけど、別れた。私から話を切り出した。
「どうして?」
さすがの彼も食い下がった。私が何度もゴメンと繰り返すと、
「そっか」
納得してくれた。
ゴメンね。あなたが悪いんじゃないの、私のせいなの、ゴメンね、ゴメンね。
「ううん。レイちゃんは謝らなくてもいいよ。レイちゃんを悲しませちゃったのは俺なんだから」
彼は最期まで優しかった。
最初のコメントを投稿しよう!