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自分の仕事に集中していると、何やら部長の席付近が騒がしい。
しばらくして、部長が『井上ー!』と呼ぶ声が聞こえた。
「はい。」
部長の席に近付く。
そこには、部長、課長、松尾さん、藤本君が全員不機嫌そうな顔で立っていた。
すごく嫌な予感がする。
四角い顔の部長が、私をじろっと見る。
「突然だが、藤本の教育係を任せたい。」
『うっ・・・。』
ちらりと松尾さんを窺うと、松尾さんが『許せ。』とでも言う様に小さく頷く。
最初から部長命令に逆らえるはずもない。
だけど、よりによって藤本君とは。
内心、吹きすさぶ嵐を気取られない様に、静かに返事をする。
「・・・分かりました。」
「良かった。」
部長はほっとした様に頷くと、再び厳しい表情に戻って藤本君を見る。
「藤本、これからは井上にみっちり教育してもらうように。井上は優秀で、一番藤本と年も近い。何かと勉強になるだろう。」
「はい。」
藤本君が私を見る。
「よろしくお願いしますー。」
『語尾を伸ばすな、語尾を!』
心の中で突っ込む。
一難去ってまた一難・・・。
私は周囲に気付かれない様、小さくため息を吐いた。
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