恋ぞつもりて

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◆◆◆ 黒塗りの車の前で、高藤と美夏ちゃんが話しているのが見える。 遠目に見た美夏ちゃんは、少し困った様な、悪く表現すれば引き攣った様な表情。そんな美夏ちゃんを助手席に乗せると、高藤が一瞬甘ったるい顔をした。 「何やってるんだか。」 空中から彼らを眺めながら、ボソリと呟く。 その声を聞きつけたのか、スーツ姿の男が俺を見た。 「Mr.SUGISAKI. What’s wrong?(杉崎さん、どうかしたのか?)」 「Nothing.(何でもない)」 男は『OK』と返答すると、作業に戻っていく。 美夏ちゃんと入れ違いに入ってきた男2人は、ゴンドラ内を撮影したり、俺に質問したりと忙しい。俺を逮捕しに来たにしては捕縛される訳でもないので、今の所俺も自由にさせてもらっていた。 そのまま窓辺に陣取って黒塗りの車を見ていると、スーツ姿の片割れが話しかけてきた。 「So, I have a memo for you from Mr.TAKATO.(そうだ、君宛てのメモを高藤さんから預かっているよ。)」 「は?」 男からメモを受け取る。 不審に思いながら広げると、そこには高藤らしい流暢な字が綴られている。 最後まで一気に読んで・・・、そして脱力した。 「マジかよ。」 メモには今回の件を”穏便”に済ませる為の指示が書いてある。 その指示に従わないと面倒くさいことになるのは分かっているが・・・、分かっているが胸糞悪いもんは悪い! 「あいつ・・・俺のことまで利用する気かよ・・・。根性悪い奴。」 黒塗りの車に向かって思いつく限りの罵詈雑言を浴びせるが、動き出した車はすぐに小さくなって見えなくなってしまった。
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