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空が白み始めた頃。
私は気怠い余韻に浸りながら、目の前の胸に頬を寄せた。
「どうかしたかい?」
卓さんが気遣う様に私の髪を撫でる。
その感触が気持ち良くて、クスクス笑いながら卓さんを見上げる。
「うん。幸せだなあって思って。」
ここ数週間は激動だった。
たくさん悩んで、落ち込んで・・・。本当に色々なことがあった。
「私、すごく不安だったから。」
私はベットから上半身を起こすと、卓さんの顔を覗き込む。
「あのね、私、ずっと自分が卓さんに釣り合わないんじゃないかって悩んでいたの。卓さんは立派な会社の社長さんだし、書道界でも有名人で、最近では雑誌にも取り上げられていて・・・。私なんて唯のOLだし、大して美人でもないし・・・。」
「そんなことを考えていたのかい。」
「うん。そこに最上さんの件もあったから、すごくへこんじゃった・・・。」
卓さんはベッドから身を起こすと、私を握る。
それから私の目を覗き込むと、真剣な表情で口を開いた。
「美夏は、むしろ私にもったいない位の女性だよ。」
「お世辞はいいです・・・。」
「お世辞なんて言わないよ。」
熱い唇が、やんわりと私の手に押し付けられる。
「私は美夏の良いところをたくさん知っているよ。例えば、新人指導に真剣に悩やむ、真面目さ。新人を叱り飛ばす、熱い情熱。パーティーに乗り込む、ど根性。全部素敵だと思うけど?」
「それって褒めてますか・・・?」
「もちろんだよ。それに、何だかんだと杉崎に丸め込まれる、素直さ。杉崎の為に泣いてしまう、優しい所。」
「何だか言葉にトゲが・・・。」
「それから、これが一番重要なんだが。」
卓さんは私を見つめながら、極上の笑みを浮かべる。
「美夏が隣にいるだけで、私が幸せになれること。」
「・・・っ。」
そんなことを思ってくれていたなんて。
私も卓さんが隣にいてくれるだけで幸せになれる。
何でもできる気がする。
同じ気持ちを抱いてくれていたことが、とても嬉しい。
「私も、同じ気持ちです。」
溢れる想いを乗せて、卓さんに自分からキスをする。
微かに触れる程度のキス。
だけど、とてもドキドキするキス。
唇を離すと、間近で卓さんはとびきり優しく笑ってくれた。
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