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「これからは不安になったら、いつでも言っておくれ?」
「うん・・・。でも不安になる度に言ってたら切りないかも・・・。」
「そんなに不安になる予定なのかい?」
卓さんは面白そうに笑うと、ひょいっと私の体を抱き上げる。
そしてそのまま、私は卓さんの上に乗せられてしまった。
素肌同士が触れあって、卓さんのぬくもりを直に感じる。
今更ながら恥ずかしくて目を逸らすと、卓さんの手が、私の左手を絡め取った。
「美夏の不安が少しでも解消するなら・・・。」
卓さんが言葉を切る。
不思議に思って目線を上げると、そこには穏やかな瞳。
吸い込まれる様に見つめていると、卓さんが私の左手を引き寄せる。
次の瞬間、柔らかな唇が薬指に押し付けられた。
「卓さん?」
卓さんは唇を離すと、やんわり微笑む。
「美夏の不安が少しでも解消するなら・・・、私は今直ぐにでも法律に縛られるつもりなんだが?」
卓さんの行為に、言葉に、頭の中が真っ白になる。
『それって、つまり・・・。』
混乱する私を、卓さんが静かに見つめる。
「どうかな?」
いつの間にか登った朝日が、カーテンの隙間から一筋の光となって差し込む。
その光に映し出された漆黒の瞳は、今まで見た中で一番美しい宝石の様だった。
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