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<<日本時間13時>>
美夏がなんとか身支度を終えた頃、日本の一部の地域ではちょっとした騒ぎが起きていた。
閑静な住宅街にある、木造一戸建て。
普段だったら平和な昼下がり。
それが一人の女性の登場によって破られた。
「律いる!?健は!!?」
バタバタと走りこんできた女性を見て、家政婦をしている通称”みわおばちゃん”が目をまん丸くした。
「実里ちゃん。これは一体?」
みわおばちゃんにとって、老舗呉服店の一人娘である実里のイメージは、慎ましやかで、上品。多少健には乱暴な所があるけれど、こんな大股で廊下を走るなんて・・・。
驚きながらも、慌てて律と健を呼ぶ。
すると、それぞれの自室から二人が顔を出すのが見えた。
その二人に対して実里がすぐに指示を飛ばす。
「律も健も居間に行って!健、すぐにテレビつけて!!」
「何で俺が・・・。」
「さっさと動く!」
実里の鬼の形相に、健が顔を引きつらせる。
小さい頃から刷り込まれた上下関係を破ることはできなかったらしく、健はしぶしぶ居間に向かう。
その背中を追いながら、律がメガネ越しに実里を見つめた。
「めずらしいね、実里が人前で"素"を出すなんて。」
「だって、もう、それ所じゃないんだもの。」
二人揃って居間の扉をくぐる。
すると健が今の真ん中に突っ立って、呆然とテレビ画面を見つめていた。
「どうしたんだ、健?」
「おい、律。」
「んー?」
「これって、卓のことか?」
律は健の肩越しに画面を見る。
そして、ひどく困った様な、やんわりとした笑みを浮かべた。
「うーん。どうやら、うちの長男の様だね。」
「んで、これってさ。」
「ああ、困ったねえ。」
健がやっと二人を振り返る。
見たことがない程渋い顔をした健は、へなへなとその場で脱力した。
「あー!卓の奴。こっちの迷惑も考えろよな!」
「こら。」
静止する律に向かって、健が吼える。
「だって、これ、どうすんだよ!!」
「んー。対処するしかないなあ。」
律がぼやいた瞬間に、家の電話機がけたたましく鳴り始める。
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