恋は砂糖菓子に似て

あっちは大荒れ

高藤邸前のアスファルトには、大きな半円が書かれている。高藤邸はその半円の直径部分に当たる。更にその半円の中には、それはそれは見事な字でこう書かれていた。

『入ったら呪われる。』

シンプルだが、誰にでも分かる脅し文句。
見ていると、関東ＴＶ以外の報道関係者も、その円の中に入るか迷っているのが見て取れた。

「どうしますか？」

「そうだね・・・。」

こんなことは前代未聞。
報道の世界に身を置いている以上、どんな状況下にあってもターゲットにできるだけ近づくのが鉄則なのだが。

・・・しかし、買ったら数十万円はするだろう”作品”を踏み荒らす勇気はない。そんなことをしたら、色々な筋からお咎めを受ける予感がする。

「最初に踏む勇気はないなあ。」

素直にスタッフに向かって本音をこぼすと、スタッフも同意するように頷く。

「誰か突破するのを待ちますか。」

だが井上もスタッフも同じことを思っていた。

多分、この“結界”を突破する猛者はいないだろうと・・・。