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『このままだと、殺されるかも。』
頭の中に、さっき見た映画の殺人シーンと自分が重なる。
体中から冷や汗がぶわっと溢れ出るのを感じながら、一生懸命勇気を振り絞る。
「離せよ!」
思いっきり腕を振ると、案外簡単に手が外れる。
ほっと一息吐いていると、目の前の健がすごくすごく悪い微笑を浮かべた。
「面倒かけやがって・・・。」
「うっ・・・。」
「おい、運べ。」
「「「はい!!」」」
突然聞こえた声に慌てて振り向くも・・・時既に遅し。
見るからに怖そうなお兄さん達が俺を取り囲む。
抵抗することもできないまま、一番屈強そうなお兄さんにひょいっと担がれてしまった。
「は、離せー!」
「暴れない方がいいですよ?落ちたら危険ですから。」
実里と呼ばれた女性が、美しい笑みを浮かべて注意してくれる。
が、その笑みすら怖い物に思えてきた。
「よし、行くぞ。」
健の号令と共に、一行は通路を進みだす。
周囲の客たちはその異様な光景に、一様に驚いた顔をしているのが見えた。
切羽詰まった状況の中、ふと最近会っていない姉の顔が脳裏を過る。
姉さん、何やったんだよ・・・。
というか、俺はこのままどうなるんだ・・・!
心の中で姉に向かって叫ぶが、当然怖いお兄さん達に解放されることはなかった。
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