1902人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
「松尾君、君は結婚式が終わるまで我が社の窓口となる様に。」
「はあ・・・。」
「そんな腑抜けた返事では困るぞ。君はこれから我が社の代表としてマスコミ対応にも当たるし、leaderzや、高藤一族との折衝にも当たるんだぞ。」
そんな怖い顔で言われても、全く話がぴんとこない。
だが、ここは引き受けなければまずいと俺のサラリーマン魂が訴えるので、殊勝顔で頷く。
すると社長は満足したかの様に一息吐いた。
「井上君も上司である君が対応してくれれば、心強いだろう。」
「はい。」
「それでは後日正式に指示を下す。下がってよろしい。」
「失礼します。」
くるりと回れ右をして、さっさと出口に向かう。
すると背後で楽しそうなやり取りが始まった。
「社長やりましたね。今回のことは、我が社のイメージアップに繋がりますよ。」
「本当だとも。井上君には臨時ボーナスをあげたい位だ。」
「こちらから宣伝しなくとも、勝手にマスコミが宣伝してくれるんですからね。ありがたい話です。見て下さい、株価だってこんなに上がって・・・。」
一礼をして扉を閉める。
そして、そこにガクリと膝を着いた。
『なっにが、株価だ!宣伝だ!!』
イライラしながら頭を掻き毟る。
『井上のことを、勝手に利用するんじゃねえよ。』
井上が一生懸命仕事をし続ける傍ら、高藤さんとの関係を大事にしてきたことを、俺は痛いくらい分かっている。その清い気持ちを、勝手に会社のイメージアップとやらに使われるのはものすっごく腹が立つ。
「ちっ。」
盛大に舌打ちをして立ち上がると、ふと視界の隅にプルプルと震えている物体が映る。
「おい・・・。」
自分でも分かる位のすごんだ声を出すと、その物体、もとい藤本が半泣きで駆け寄ってきた。
「すみません、すみません。」
「いいから話せ!何があったか話せ!!」
藤本のネクタイをギューギュー引っ張りながら詰め寄ると、藤本が『■△○★☆?×○』と変な声を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!