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「早く、説明しろ!」
すると、藤本の目が僅かに見開いた後、顔が真っ青になる。
「おい?」
そこまで首を絞めたのだろうか。
慌てて手を放すと、今度は藤本がすごい勢いで後ずさる。
「お、おい・・・。」
心配になって手を伸ばしかけた瞬間、後ろから凄みのある声が聞こえた。
「松尾と藤本だな。」
ゆっくりと振り向く。
するとそこには、明らかにサラリーマンではない男が立っていた。
引き締まった体つきと、人も殺せそうな眼光。
しかもどうやら怒っているらしく、全身から負のオーラが出ている。
「どいつもこいつも手間をかけさせやがって。」
「ええと、あなたは?」
その男は返事をしないままツカツカと詰め寄ると、藤本を軽々と脇に抱えてしまった。
「◇○◎××*■!!?」
藤本は半泣きでバタバタしているが、男は気にした様子もない。
唖然とその様子を眺めていると、その男と視線が交わる。深い夜の様な瞳が俺を貫いた。
「一緒に来い。」
「・・・はあ。」
バタバタ暴れる藤本と、謎の男が廊下をズンズンと進んでいく。
俺は盛大にため息を吐くと、二人の後を追う。
先ほどまであった不信感やらは消えて、今はただただため息が出るばかり。
目の前の男が誰かは知らないが、この男と同じような目をしている人間を俺は知っていた。
「高藤一族っていうのは、こんな奴ばかりなのかね。」
思わず漏れた独り言に、思いがけず返事が聞こえる。
「ああ。諦めるんだな。」
夕日を浴びて、男のピアスが妖しげに光った。
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