あっちは大荒れ

12/17
1901人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
「早く、説明しろ!」 すると、藤本の目が僅かに見開いた後、顔が真っ青になる。 「おい?」 そこまで首を絞めたのだろうか。 慌てて手を放すと、今度は藤本がすごい勢いで後ずさる。 「お、おい・・・。」 心配になって手を伸ばしかけた瞬間、後ろから凄みのある声が聞こえた。 「松尾と藤本だな。」 ゆっくりと振り向く。 するとそこには、明らかにサラリーマンではない男が立っていた。 引き締まった体つきと、人も殺せそうな眼光。 しかもどうやら怒っているらしく、全身から負のオーラが出ている。 「どいつもこいつも手間をかけさせやがって。」 「ええと、あなたは?」 その男は返事をしないままツカツカと詰め寄ると、藤本を軽々と脇に抱えてしまった。 「◇○◎××*■!!?」 藤本は半泣きでバタバタしているが、男は気にした様子もない。 唖然とその様子を眺めていると、その男と視線が交わる。深い夜の様な瞳が俺を貫いた。 「一緒に来い。」 「・・・はあ。」 バタバタ暴れる藤本と、謎の男が廊下をズンズンと進んでいく。 俺は盛大にため息を吐くと、二人の後を追う。 先ほどまであった不信感やらは消えて、今はただただため息が出るばかり。 目の前の男が誰かは知らないが、この男と同じような目をしている人間を俺は知っていた。 「高藤一族っていうのは、こんな奴ばかりなのかね。」 思わず漏れた独り言に、思いがけず返事が聞こえる。 「ああ。諦めるんだな。」 夕日を浴びて、男のピアスが妖しげに光った。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!