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<<日本時間18時>>
高藤肇(はじめ)はその光景を見て思わず笑ってしまった。
実家である高藤邸の周りには報道陣が大勢詰めかけている。
が、なぜか門の周辺には誰もおらず、綺麗に半円の円周の外にぎゅうぎゅうと鮨詰め状態になっていた。
よくよく見てみると、その誰もいない半円の部分には『入ったら呪われる。』の文字。
「おやおや、律儀に守っちゃって・・・。」
報道関係者でも、呪いとか信じるものなのか?
そんなことを考えながら、報道陣の間をすり抜ける。
やっとのことで一番前まで辿り着くと、そこには大きな機材が置いてある。
「ったく。」
ひょいっと大股で跨ぐと、そこは既に半円の中だった。
その瞬間、周囲がしーんと静まり返り、全員が俺の挙動に注目しているのを感じる。
「やりにくいなあ。」
ぼそぼそ呟きながら、『れ』とか『呪』の字を踏みつけ門に辿りつく。
慣れた手順で門を開けて中に入ると、背後から図太い歓声が上がった。
「彼に続けー!」
「結界を突破しろー!!!」
そんな声を聞きながら、母屋に入る。
『健に怒られるかな。』などと考えながら客間に向かうと、案の定不機嫌そうな健に遭遇した。
「肇さん・・・!俺の作品踏み荒らしただろ?」
「しょうがないだろう。あそこを抜けないと入れないんだからさ。俺だって苦慮の選択だよ。」
笑いながら応じると、健がむっすりと黙り込む。
その肩をポンポンと叩きながら健の背後を見て・・・、そして言葉を失った。
そこには3人の見知らぬ男性が座り込んでいた。
学生と思われる男性は若干不機嫌そうにしょぼくれているし、サラリーマン風の若い男性は明らかにビクついている。最後の一人である、やはりサラリーマン風の男性は、微妙な表情で俺たちを見ていた。
「これは・・・?」
健の方を向くと、健はめんどくさそうに頭を振る。
「拉致リストに載ってたメンバー。」
「表現が悪いぞ・・・。」
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