恋は砂糖菓子に似て

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「え、ここって・・・。」 着いた先は、賑やかさとは無縁のターミナル。 私がシンガポールに到着した時のターミナルとは、まるで雰囲気が異なっていた。 タクシーが完全に止まると、すぐに係員が駆けつけてくる。卓さんは係員に一言二言話しかけると、私を振り返る。 「どうやらあまり時間がなさそうなんだ。このまま飛行機に直行してもいいかい?」 「は、はい。」 「じゃあ、行こうか。」 卓さんは私の手を取ると、ターミナルの中へ誘導してくれる。 中に一歩入ると、そこは想像をはるかに超えた世界だった。 テレビの中でしか見たことがない人達が行き交う中、誰も並んでいないカウンターで親切丁寧にチェックイン、しかも同時に出国審査まで終了。その後係員の誘導に従って奥に進むと、車に乗せられてしまった。 唖然としたままの私を乗せて、車はするすると進む。たくさんの飛行機やら、作業者やらの間を抜けて辿り着いた先は・・・、とある飛行機の目の前だった。 「え!!」 思わず卓さんを見上げる。 「あ、あの。これって??」 目の前にあるのは、明らかに民間航空会社所有とは思えない飛行機。 ピカピカに磨き上げられた機体には、金色のラインが美しい曲線で描かれている。 入り口には銀色の梯子がかけられていて、その傍には白い制服を着たおじさんと、エキゾチックな雰囲気の美女2人が私達を待っていた。 自分では見えないけど、どうやら情けない顔になっていたらしい。私の顔を覗き込んだ卓さんが苦笑した。 「友人に貸してもらったんだよ。」 「へ?」 「以前からプライベートジェット機を貸す貸すとうるさい奴でね・・・。だが今回は良い機会だと思ったから、借りてみたんだ。」 「ど、どうして・・・。」 「美夏との時間を大切にしたいから。」 きっぱりと言われて、今度は恥ずかしさで顔が火照る。 『そっか、さっきはぐらかした答えって、この飛行機のことなんだ・・・。』 そう思い至ると、何だか嬉しくなってきてしまう。 改めて飛行機を見渡す。さっきまでは戸惑いしかなかった飛行機も、今度は楽しい気持ちで眺めることができた。
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