恋は砂糖菓子に似て

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「じゃあ、ずっと傍にいさせて下さい。」 「勿論。」 卓さんは私の左手を包み込むように掴むと、その薬指にキスをした。 「えっ・・・。」 途端に鼓動が大きく跳ねる。 見慣れた私の手。 だけど、その薬指には見慣れない指輪が着けられている。 いつの間に着けられたのだろう。 眠りに落ちる前には、確かに何も着けられていなかったのに・・・。 薄暗い照明の中でも、一際キラキラと輝く指輪は、華奢な銀色のリングの上にダイヤモンドが収められている。 大粒のダイヤモンドは四角くカットされていて、それがまた優雅な雰囲気を醸し出していた。 「これ・・・って。」 「美夏は四角って答えたから、四角にしてみたんだが?」 「え?」 何だか上手く働かない頭で、一生懸命卓さんとの会話を思い返す。 数十秒後、どうにか今朝の会話を思い出すことができた。 「もしかして、丸と四角とハートの質問のこと?」 「ああ。嫌かい?」 勢いよく頭を振る。 そう、嫌じゃない。 むしろ嬉しい。 嬉しいけど、まさかあの質問が指輪を意図していたとは・・・。 目の前の大真面目な表情の卓さんを見ると、ちょっと笑えてきてしまった。 「もうっ。そうならそうって言ってくれれば。」 「驚かせたかったんだよ。すまなかったね。」 「とっても驚いたけど・・・。」 もう一度指輪に視線を落とす。 やっと指輪をもらったことが、現実味を帯びてくる。 それと伴ない、胸がぎゅーと締め付けられた。 「嬉しいです。ありがとうございます。」 「良かった。」 卓さんがほっとした様に表情を緩める。 その目がとっても優しい。 「知っているかい?このダイヤモンドのカットの仕方は、プリンセスカットって言うらしい。」 「そうなんだ。」 まじまじと指輪を見つめる私を、卓さんが覗き込む。 「ずっと、私のお姫様でいておくれ。」 「・・・っ。」 唇に柔らかな感触。 目の前には、笑顔の卓さん。 幸せすぎて、気恥ずかしくて、どうにかなってしまいそう。 震える声で、どうにか『はい。』と返事をする。 すると、図ったかのように朝日が窓から差し込む。 更に輝きを増した指輪が、私達の将来を祝福するかの様だった。
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