第1章

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君が自分で立てなくなった日、君がいつものオシッコする場所まで辿り着けなくなった日の顔を今も覚えてるよ。 まるでアタシにゴメンなさいと訴えてるかのような淋しく情けない顔をしてたよね。 たまらず頭をヨシヨシって撫でたけど、お利口な君にはきっと酷く悲しい出来事だったんだと思う。 自分でハウスから出られなくて我慢出来なくて、お漏らししてしまった時も悲しい顔をしてたね。 君の意思とは別に大きくなり過ぎた腫瘍を痩せた身体で支えられなくて、いくら食べても腫瘍にばかり栄養を吸い取られてたんでしょう? 構わないよ、お漏らししても叱れる訳ないし今まで頑張った君を責める事なんてしないから、もうオシッコする場所まで歩かなくていいからね。 どうしても歩いてあの場所まで行きたいなら、介護ハーネスで君を持ち上げてあげるから試して見ようね。 それすら出来なくても君が悪いんじゃなく、君の体を蝕んだ腫瘍が悪いんだから責めたりしないから安心していいからね。 それから君の限界が直ぐやって来て、立つことも出来なくなって君も遂に立ち上がることも諦めた。 大丈夫、アタシが君の足になってあげるから心配いらないよ。 良いお天気にはハーネスで君を持ち上げて日向ぼっこさせてあげるよ。 太陽を浴びた君の体、いつもお日様の匂いがしてたね。
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