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当日。
「浴衣か」
「似合いますか?」
似合う。
可愛い。
なんて言葉は恥ずかしくて言えない。
「レジ、任せた」
「あ、はい」
質問に聞こえないふり。
うなじがきれいだ。
髪飾りが揺れる髪は、程好く甘い香水の香りがした。
動くたびに胸元が緩み、中が見えそうになる。
正直ヤバい。
「…田中さん」
「あい?」
近くで射的の店番をしていた田中さんに清水を渡す。
田中さんは年中着物を着ているおばあさ
「あたしゃおねえさんだ、パン屋の息子」
…おねえさんだから、清水の浴衣も直してくれるだろう。
「服直してくれますか?」
「あいあい」
「お願いします」
「こんな上玉逃がすなや」
俺にだけ聞こえるよう囁いて、田中さんはウインクした。
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