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「チョコパン2こですね」
清水が歩く度、下駄が鳴る。
働く姿をちらりと盗み見する。
…キレイだ。
普段見えないうなじ。
揺れる簪が俺の中の何かを誘う。
「店長」
清水は俺を見上げる。
一瞬そらし、視線を戻す。
見つめていたのがバレたかと思った。
「質問が」
何故かそこで、清水の体がこっちに倒れてきた。
反射的に抱き止める。
華奢な肩、香水と汗が香る。
強く抱きしめた手を、そっと離す。
驚いた顔を眺め、かける言葉を迷う。
『危ないな』
『転ぶな』
…どちらもどこか違う。
だから、結局これを言う。
「…彼氏が待ってるんだろ」
「あ…はい」
照れた顔を眺める。
もし俺が彼氏なら…
「…ちょう、店長?」
変な想像を捨てて、清水に言う。
「もう上がれ、あとはいいから。遊んでこい」
「でも」
「いいから行け」
「……ありがとうございます」
頭を深く下げてから、元気に駆け出す清水を見送る。
……抱きしめた時の感触を思いだし、手で拳をつくった。
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