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『桃源』と言う、妖怪の世界での名家の出身だが、様々な経緯を得て、鬼川と同居するに至っている。鬼川に対して、そこまで献身的なのは、彼に命を救われたと言うこともある。
今、自分がこうして平穏に暮らせているのは鬼川のお陰だ。全部が全部彼のお陰と言う訳では無いが、命の恩人と言っても良いだろう。
だから、こうも思う。
ーーもしも、鬼川束が命の危機に晒されようものなら、迷わず自分の身を盾にするつもりだ、と。
13歳の少女でありながら、桃源無果実の中ではそんな覚悟が出来ていた。
「……それにしても、遅いなぁ」
形になり始めたオムライスを見つめながら、桃源は呟いた。
鬼川束の義手は、知り合いの武器職人による完全オーダーメイドの逸品。鉄製であるにも拘わらず、使いやすく、軽く、頑丈に出来ている。
更に、指からは弾丸を発射出来るようになっているため、基本的に鬼川は拳銃を他に持ち歩かない。腰のベルトにも予備の拳銃は無いため、この義手が壊れたら、無防備になるのだが、嵩張って余計に扱いづらくしてはならないと言うことで、両手の義手型拳銃しか持ち歩かないのだ。
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