ヒットマン陰陽師vsアサシンマジシャン

2/11
前へ
/59ページ
次へ
 「あのスマートフォンの断面はあまりに綺麗過ぎた」  声のした方向に向かって、まるで誰か話し相手がいるかのような気安さで、鬼川は話し掛ける。  いや、そこに誰かがいることを確信している。  「今まで色々な得物を使った奴を相手取ってきたが、似たような得物を使う奴はいた。例えば」  例えばーーワイヤーのような細い糸とか、と鬼川は真上を指差して言う。  だが、真上にあるのは細い糸でもなければ、ワイヤーでもない。  「電線をバラして鋭利な凶器に変えた、だろ?」  むしろ、彼の真上には何も無かった。  「ここは住宅街。電線の一本も無いのはおかしい。ましてや、さっきまで俺が隠れていたのは電柱だ」  今更ながら、良い天気だと思った。電線が無いとここまで綺麗な空を拝めるのか、とも思った。  「随分、手先が器用なんだな。普通バラせねぇだろ? 電線なんて」  「そうですね、私はマジシャンですから」  と、ここでようやく答えになっていない返事がきた。  人を小馬鹿にしたような女性の声だった。  「いきなり頬を弾丸が掠めたのでびっくりしましたよ」  「狙ったからな」
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加