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どんなに人の多い街であろうと、あまり人の通らない死角はある。例えば、埃や蜘蛛の巣の張った薄暗い路地裏なんかがそうだ。
しかも、現在午前3時。外気が冷え込み、風邪を引いてもおかしくないくらいの場所にわざわざ人なんか来ない。来るとしたら、飲み会なんかで酔い潰れたオッサンあたりだ。
そうでなければ、わざわざこんな場所に来ないーーはずなのに……。
「ヒットマンだ」
一体どんな頭をした奴だろう?
「つまり、卵はタイムセールでオバサン達に全部やられた、と」
「はい。それで何とか別のもので作れないかと思い、こんなことに……」
険しい顔をした青年と、場の空気の悪さに堪らず俯くポニーテールの少女。
彼ら2人の前の皿に置いてあるのは、お世辞にも美味しそう、いや、それ以前に料理とは呼べない代物だった。
文章として文字に書き起こす気にもなれない形容をした『それ』は、オムライスのはずだった。
「材料復唱」
険しい顔をした青年が促す。
「ご飯、ケチャップ、人参、玉葱、キノコ、各種調味料……ここまではいつも通りのレシピで……」
「ああ、それで?」
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