タイムリミットはオムライス

9/12
前へ
/59ページ
次へ
 ここは閑静な住宅街。下手に騒ぎを起こせば、人目に付いて、今後行動しづらくなる。  「この断面……鋭利なワイヤーでも使ったのか……?」  もう使い物にならないスマートフォンの残骸を片手に、切断面を覗き込む。  バチバチと断面から火花が散っている。  「人に恨まれるようなことは、してきたけど……」  言いながら、自分の得物を構える。正確には、肘から伸びる黒い金属製の義手を構える。  「誰から買った恨みかは知らねえけどなーーこっちはオムライスが待ってんだよ」  同時刻ーーまさか鬼川が命を狙われているなど知る由も無く、今度は普通の卵を使い、オムライスを作っていた。  長い髪の毛をバンダナで纏め、チェックの可愛らしいエプロンを身に付け、台所に向かっていた。  「ふふっ♪ 鬼川さんに喜んでもらえるオムライス♪ 頑張っちゃいますから」  鼻唄混じりで器用にフライパンを使いこなしていた。  こうしている分には、普通の女子中学生だが、バンダナからはみ出た髪の生え際からは2本の立派な角が生えていた。  茨木童子、と言うのが彼女の正体である。要するに、鬼の一種である。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加