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ここは閑静な住宅街。下手に騒ぎを起こせば、人目に付いて、今後行動しづらくなる。
「この断面……鋭利なワイヤーでも使ったのか……?」
もう使い物にならないスマートフォンの残骸を片手に、切断面を覗き込む。
バチバチと断面から火花が散っている。
「人に恨まれるようなことは、してきたけど……」
言いながら、自分の得物を構える。正確には、肘から伸びる黒い金属製の義手を構える。
「誰から買った恨みかは知らねえけどなーーこっちはオムライスが待ってんだよ」
同時刻ーーまさか鬼川が命を狙われているなど知る由も無く、今度は普通の卵を使い、オムライスを作っていた。
長い髪の毛をバンダナで纏め、チェックの可愛らしいエプロンを身に付け、台所に向かっていた。
「ふふっ♪ 鬼川さんに喜んでもらえるオムライス♪ 頑張っちゃいますから」
鼻唄混じりで器用にフライパンを使いこなしていた。
こうしている分には、普通の女子中学生だが、バンダナからはみ出た髪の生え際からは2本の立派な角が生えていた。
茨木童子、と言うのが彼女の正体である。要するに、鬼の一種である。
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