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「……?」
「ごめんね。
痛いところはない? ちゃんと話せる? 自分の名前が分かるかい?
本当にごめんよ」
彼は眉を下げながらそう話す。
脳がそれに追い付かなくてぼんやり聞いていると、彼がまた身を乗り出した。
「ボクが誤って、君の頭を殴ってしまったみたいなんだ。
今、二階の休憩室を使わせてもらってる。
本当にごめん」
彼は何度も謝罪した。
ああ、私、殴られたのか。
と、彼の手を何となく見ると、太い金属製の指輪がほぼ全ての指に嵌めてあって、ゾッと体が寒くなった。
「ええ、大丈夫よ。
頭はまだ痛むけど……、」
「! 本当にごめん。
謝って許してもらえるなんて思ってないけど……。
歩けるようになるまで、ずっとここで休んでいていいよ。
あ、そうだ、何か飲み物とか……」
彼はワナワナと話す。
ゆっくり起き上がると、私は硬い小さなソファーの上で寝転んでいた。
「大丈夫よ、心配しないで。
素人なのにあんなところに行った、私が悪いの。
迷惑かけてごめんなさいね」
私はこちらこそと頭を下げると、彼は泣きそうな顔で頭を振った。
「そんな! とんでもないよ。
せっかくの楽しいライブを、台無しにしてごめんね」
何を言っても謝罪の言葉しか出てこない彼がおかしくて、少し笑ってしまった。
「……な、何笑ってるの?」
「いえ、別に……。
私はアビィ・サリヴァン」
私がそう名乗ると、彼は嬉しそうに笑った。
彼の初めて見る笑顔は本当に小さな子供か天使のようで、とても無邪気で可愛らしい笑顔だった。
「ボクはジーン・ロットン。
よろしくね、アビィ」
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