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「なあ、シドニーよ」
「ん? 何だい、メディ」
大好きなザ・ミュールのレコードを嬉しそうな笑顔で回すシドに、相も変わらずキースから貰った甘い葉巻をふかせるメディが話しかけた。
「お前はよ、ナンシーとは結婚しないのか?」
いつものチンチンランドに、キースを除いただらけた四人がいつまでも居座っている。
メディの質問を聞いて、シドが照れたように顔を赤くしながら、ガチガチに立てた黒髪の頭を乱暴に掻いた。
「ああ、……結婚はしようと思ってるよ。それはもう、今でもしたいくらいだ。
でも……、まだ生活も安定してないし、やっとママから仕送りをしてもらわなくても何とかやっていけるくらいの生活なんだ。
そんなので、まだアビィを支えることも、縛り付けることもできないから……、
ブラックストーンズが大人気になって、僕が一人前のキーボーディストになったら、絶対にアビィにプロポーズするんだ」
ニィッと天使のような人の好い笑顔を見せて、シドはそう宣言した。
ほー、それはそれは、とジャックが煩わしそうに相槌を打つ。
それと同時に、絶妙なタイミングでナンシーがスタジオに戻ってきた。
「ただいま。
みんなのお酒と煙草、買ってき……」
「おかえり!
ありがとう。ごめんね、お使い頼んじゃって。
アビィ、愛してるよ~」
シドはナンシーの姿を見た途端、涙目になりつつも満面の笑顔で彼女を抱き締めた。
「ジーン、どうしたのよ。いきなり……」
青痣も殴傷も以前より少なくなった顔のナンシーが、そんなシドに戸惑うように笑う。
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