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「みんなが見てるわ」
「関係ないよ!
大好きだアビィ、今日もとっても可愛いよ」
いつもの調子でシドが彼女の頭を撫でると、「私も愛してるわ、ジーン」と言いつつキスなんて始めてしまうから、僕は呆れて溜め息混じりにメディに話しかける。
「で、メディは何でそんなこと聞いたんだ?」
「今日、結婚するからさ。」
僕がそう言うと、メディは自分の左手を見詰めながら話した。
「は?
キースがかい?」
突然の告白に目が点になりながら、僕は問う。
「馬鹿な。俺だよ、俺」
メディが言う。
「お前が? 結婚?
気でも狂ったんじゃないか?」
「オイオイ、また女をレイプして子供でも孕ませたなんて言うつもりか?
冗談じゃねえぜ」
信じられないメディの発言に僕とジャックが責め立てる。
メディは笑わない。
無表情のまま、それでいて少し優しそうな顔で。
「ちげーよ。」
メディはそう言ったまま、自分の左手を見続ける。
「しっかりしろ、メディ。
そもそも、お前に彼女なんかいな――」
僕はそこまで言って、やっと思い出した。
メディの薬指に、安そうな細い指輪が光る。
「どういうことだい?」
いつの間にかナンシーとのラブラブタイムを終了させたシドが、首を傾げてそうとぼけた顔をしている。
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