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ガチャリ。
玄関の扉の開く音が、深夜三時の夜の闇の中に響き渡った。
「やっと気付いたのね。
馬鹿な女。」
その幼い声にビクッとして、思わず扉を開けようとしていた手の動きを止めた。
振り返ってみると、勝ち誇ったような表情で憎々しく笑う、小学六年生の姿。
「言ったじゃない。
お兄ちゃんは、あの知障じみたキチガイ女の代わりにアンタを抱いてるだけだって」
私はその言葉に、玄関先に飾ってある花瓶さえも叩き割ってやろうかと思うほどの怒りを覚えた。
慌てて涙を拭い、この色ガキを睨む。
「アンタはケチャップ女には勝てないわよ。
もちろん、私にも、ね」
そのふてぶてしい態度に、ビンタのひとつでもしてやりたくなる気持ちをグッと堪え、なるべく落ち着いた声色で言い返す。
「……ちょっと真芝に処女奪って貰ったからって、偉そうに言わないでよ。
そのせいで、大好きなお兄ちゃんはずっと苦しんでるの、知らないの?」
私だって処女貰ってもらったんだから、と言う言葉は呑み込み、無意味な張り合いをする。
「っそ、そんなことないわよ!」
「あなたとのアレは、真芝にトラウマを植え付けさせただけ。
全然気持ち良くなかっただろーねー。すぐ萎れちゃったんじゃない?
まあ、その証拠にあなたとのあの儀式めいたアレは一回だけ。
私とのエッチは何回だってしてるんだから」
私の勝ちね、と三つ以上年の離れた娘に向かって、大人げなく言い返してしまう。
向きになったマセガキが、また同じように声を荒げる。
「はあ?
あんたとのセックスこそ何も感じな……」
「いーーえ。
その証拠に、私は何回だって真芝の愛をこの子宮にもらってるんだもん。」
マセガキの言葉を遮り、決定的な勝利の証拠を言う。
多分、今わたしはきっと勝ち誇ったような笑顔をしているだろう。
そうよ。真芝は私の中にいつも愛を注いでくれた。
今日だって、つい小一時間前だってそうだ。
今も私の体の中には、真芝の精液が残っている。
何にも変えられない、確実な勝利の証拠。
ただ、……。
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