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つまらない時間だ。
それに、空気が割れてしまいそうな程に鳴り響く大きな音が耐えきれなくて、私はそこを出ていくことにした。
友人には悪いけど、後から会場近くのカフェかどこかで合流しよう。
そう考えながら振り返って、人混みの中を掻き分け、出口へと足を運んだ、その瞬間。
――ゴツッ。
鈍い音が、自分の後ろらへんから、低く響いた。
途端に眩む視界。
強烈な頭の痛みと、足の力が抜けていく感覚。
ぼんやりと反転する世界。
あれ、私、どうしたんだろう……。
どんどん小さくなっていく歌声を聴きながら、私は意識を手放した。
――――――――
――――
「…………」
さっきよりも、幾分か明るい小さな部屋。
だんだんと焦点が定まっていく中で、私は強烈な後頭部の痛みに気が付いた。
「ッ……」
「よかった、目を覚ました!」
目の前にいたのは、何とも言えないぐじゃぐじゃの髪をした、革ジャン姿の男だった。
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