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夕暮れ時。
見慣れた景色の中に二つの影。
いやはや、今日も楽しかったですな!と私は先を歩きながら振り返る。
少し離れて私の後をついて来る彼に笑いかけたのはいいが彼はというと家に帰ったらなんのゲームをしようと呟き考えている最中であり…簡単に言うと話を聞いていないしこちらを見ていない。
チッ、と舌打ちをしてから彼の腹部を軽く殴った。
「ちょ、何するんですか急に」
「あんさんが話聞いてくれてないからー」
「聞いてますって…
お金がないんでしょう?」
「ごめん、そんな話全然してないけど大体あってる」
また歩き出すと今度は彼が足を止める。
つられて私も止まり、彼が見つめる先を見る。
古本屋さんだ。
この道を通る度に見かける、如何にも怪しそうな店。
店先に沢山本が積まれていて、店内もかなり本がある。
外からは見ても中に入ったことはない。
「朱汝先輩、どうせなんで行ってみません?」
「えー…帰り歩き確定…まっ、いいや。
いーよ行こ行こ、気になるし」
正直ここまでしか覚えていない。
なんであの時やめようって言わなかったのか、後悔している。
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