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「さて。なんでかな。駐輪場に止めてるってことは 乗って帰って来てるんだよね」
右手でこめかみ辺りを揉みながら
サドルの行方を 思い出そうと努力してみたものの
何も思い出せない。
酔った自分が何かやったのか イタズラなのかは 分からないが
とりあえず このままでは自転車には乗れない。
とはいえ 今から徒歩で駅に向かうと仕事に遅刻してしまう。
「しょうがない。バスに乗るか。」
極力 出費せずに勤務したいポリシーとは異なるが まぁ 仕方がない。
バスの時間 間に合うといいけど。。
初めて利用するバスだけに 不安も多い。
とりあえず バス停まで着いたら職場に連絡だけはしておこう。
とうとう やったか(笑)と 笑い声が聞こえてきそうだなー と想像しながら歩いていると 思わず ふふっと笑ってしまい
慌てて咳払いでごまかした。
いわゆるベットタウンと呼ばれるこの街は 通勤通学ラッシュが凄まじい。
普段は人通りの少ない この辺りも朝夕はにわかに活気づく。
勤務先が都心ではないおかげで 有難いことにラッシュには遭わないで済んでいるが まだまだ朝の時間には変わりない。
向かうバス停には 数人の列ができていて
こちらを ちらちらと伺っている。
どうやら そろそろバスが来る時間のようだ。
良かった。これなら間に合いそうだ。
ポケットから出した携帯を 元に戻し ICカードに持ち替えた。
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