第1章

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「これで、お前に"それ"の"所有権"が渡された。 "それ"の能力と効果はこれからわかるからの。 後は、必要最低限の護身用魔法の習得じゃ!」 あれやこれやと一方的に話を進める老婆の勢いに圧倒されて、少女は何回もうなづく。 「……魔法を習得する時間短縮のために……お前の脳に魔法を書むが、激痛がはしる。じゃが瞬間ですむからの……ちと、我慢せい!」 老婆は頭上にかざした右手の人差し指に紫色の光を灯すと、文字を書き記す動きをとる。 すると、紫色の光が後を追い空中に文字を形成して行く。 「まず一つ目の魔法じゃ!」 空中に書かれた毒々しい紫色の光の文字が、老婆が指差す少女に飛来。 おとなしくそれを見ている少女の頭に文字が"はいる"。 文字の意味、発音、魔法の効果が瞬時に頭に記憶されていくが、脳が焼かれる痛みに少女は堪らずその場に倒れこみ、両手で頭を抱えてしまう。 少女へ一つ目の魔法が書き込みされる数秒で、老婆は4つの魔法を書き終えていた。 さあ、はやく書き込ませろと言わんばかりに紫色の文字4つが少女の頭の周囲を回る。 かすかな軋む音が老婆の耳に届く。思った以上に早く訪れる"その時"に内心で焦る。少女にはまだ多くの事を伝えねばならない。 現実世界に目覚め歩む新たな命に。しかし、間に合わない。 時が待ってくれない。ならば、魔法と共に新たな命に伝えよう。いつか、"夢"で知ることができるように。 「……4つの魔法をいっぺんに書き込むが、ワシの愛だと思え!!」 伝えきれなかった事を書き込めた魔法の文字が4方向から、同時に少女の頭に入り込む。魔法の書き込みと、伝えたい事柄が脳に刻まれて行く。
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